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保険代理店のつぶやき


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マンション専有部で「全損」はない?

12月も半ばに差掛かり、今年も終わろうとしています。

仕事をしていると1年が過ぎるのが本当に早く感じます。

 

今年後半で大きな話題となったのが、マンションの杭打ちデータ偽装事件でした。

 

 

これは建設業界内の様々な問題や、事業主、元請け会社、下請け会社との構造的な体質や、データではなく実際の建築物と地殻、建築技術など様々な問題が有り一概に何が正しいとは言い難いところがあります。

ちゃんとデータ通り杭を打っていれば傾くことがなかったのかといえば、またそれは違っているかもしれません。土の中奥深い部分がどうなっているのか、本当にわかっている人なんかいませんから。

 

それでも、現在でもマンションは建ち続け、今後も新築マンションが増えていきます。

 

そして、各企業の決算期に当たる3月に多くのマンションが引渡をする時期になります。

この3月の引き渡しに向け、一斉に入居説明会が開かれます。それがこの12月、年を明けて1月に開催されます。

 

この場では、銀行ローンを受ける人は「金消会」というローンの手続きを行います。その他、管理会社の手続き、登記手続き、引越しの予約、インターネットといった手続きなどを行います。

 

この後、引渡しの約1か月前頃から実際のマンションを見る内覧会があり、最終引渡しとなります。

 

この入居説明会では火災保険の案内もされます。近年はすべての銀行がそうではなくなりましたが、融資の条件として火災保険の加入が義務付けられています。

 

万が一火事で全焼してしまった時に、もし火災保険に入っていなければローンを支払えなくなり、自己破産をされてしまうと銀行は大きな損失を被るからです。

逆に言えば、現金で購入した方は火災保険は全くの任意だということになります。

 

しかし、保険代理店の立場からすると、ローンなどの事だけではなく、火災保険の加入は絶対にしておくべきだと考えます。

 

時々マンションの販売会社の人でも「マンションは全燃することがないから火災保険は要らない」という人がいます。

確かに、密閉性が高くスプリンクラーもちゃんと設置されていて全焼することは少ないかもしれません(しかし全くないわけではありませんが)。

実際、私もマンションの火事による事故は殆ど経験がないですし、最近の壁紙やカーペット、カーテン、衣類は難燃性の素材が主流なので一気に燃え上がるような事は非常に少ないと考えられます。

 

では、所謂「全損」ということはほとんど有り得ないのでは、と考えるために火災保険は要らない、と言うのです。

 

しかし、「全損」はあります。これは断言できます。

 

ではどんなケースが考えられるのか?

 

マンションという共同住宅で一番多い事故は「漏水事故」です。

どこかから水が漏れ出て居住区である専有部分に浸水され、壁紙や家具に損害が出る事故です。

 

「漏水事故」は大きく分けて3つの漏水元が考えられます。

①上の階の住人が水を出しっ放しにしたり、何かを排水口につまらせたり、漏水しているのを放置してしまったことが原因で下階の住人に損害を与える。

②共有部に当たる上下水道配管やスプリンクラーなどの防災設備配管から水が漏れて、居住区である専有部分に被害が出る。

③居住専有部の水道管を壊してしまい自宅の床や壁紙、家財に損害が出る。また、漏水して専有部(床や壁)に損害がでる。

 

①の場合は漏水元の住人が賠償責任を負います。この場合、「個人賠償責任保険」に加入していればこの賠償責任に対応できます。賃貸に住む時に必ず火災保険に加入させられますが、このトラブルに対応するためです。マンションによっては管理組合で加入している「共有部火災保険」に特約として入居者全員を対象とする個人賠償責任保険に入っていますが、あまりに事故が多いため、保険料が年々値上がりし、管理組合によっては「個人の責任は個人で担保すべき」として、入居者個々での加入を勧めているマンションも多くあります。

 

②の場合はマンションの管理組合(管理会社)が賠償責任を負いますので、施設賠償責任保険に入っていれば、専有部の損害の修理代を出してもらえます。

 

③は自分の管理責任で自分の財産に損害を与えていますので、自分が加入している「火災保険」で対応できます。実はこの事故で全損になるケースもあります。大きな水漏れ事故が有り、暫くすると床が波打つように浮いてきました。そしていざ床をめくってみるとおびただしい「カビ」が・・・。

修理代900万円。加入している保険の保険金額は1000万円でした。火災保険では保険金額の8割を越えると「全損扱い」に認定されます。全損になると、契約している火災保険は終わりになります。つまり、再度新たに火災保険を契約しなくてはいけません。

火災保険には特約として「臨時費用保険金」という、支払い保険金額に上乗せをする特約などもありますので、これら特約も必ず付帯しておく事をおすすめします。

時々、修理業者によっては、作業人数を過剰に上乗せしたり、業者見積もりと保険会社の鑑定人が認定する内容と差がある場合、請求される修理代金より保険金として認定される金額が低くなるケースが発生します。契約者がいくら交渉してもどうにもならない場合でも、「臨時費用保険金」による上乗せの保険金が出れば、契約者が損をするようなことを防ぐことができますので、このような特約は是非とも付帯すべきですし、保険代理店としては付けておくことが当たり前のようにオススメしています。

 

そして、大事なのは「補償内容」をミニマムにしないことです。

火災保険の最低契約補償内容は

・火災、落雷、破裂、爆発

・風災、ひょう災・雪災

です。

保険料を安く抑えようとして、最低の補償内容でいいという人が時々いますが、先程も書いたように、火災で全焼することはすごく少なくなりました。しかし、最低補償内容では、マンションで一番多い事故の「水漏れ」事故は担保されません。

これこそ火災保険に入っている意味がなく、むしろ保険料を無駄に捨てている気がします。

 

最近の保険商品は「マンション向けプラン」が用意されている保険会社もあります。

・火災、落雷、破裂、爆発

・風災、ひょう災・雪災

に加え、

・水濡れ

・盗難

・外部からの飛来

が付帯されています。更に

・偶然な事故による破損

も追加できます。

「偶然な事故による破損」とは、テーブルを動か動かしている時に壁やドアにぶつけ穴を開けてしまったというようなケースです。

 

しかし、水災補償は基本的に外されている場合が多いです。

水災とは、大雨や川の氾濫、土砂崩れなどによる浸水損害や水害のことです。

マンション専有部では、2階以上の方はあまり心配する必要がないからです。

しかし、水災補償については1階の方には必ずおすすめしています。

マンションの1階のお部屋の床は地盤面との高さがあまりない建物があります。

最近のゲリラ豪雨に見舞われると、すぐに浸水してしまいますので。

 

ただ、気を付けていただきたいのが、「窓を開けっぱなしにしていたら浸水してきた」場合です。この場合、保険の対象になりませんので気をつけてください。

同じように、風災による損害でも、「窓を開けっぱなしにしていたら風が吹いてきてテレビが倒れた」というような場合も保険の対象になりません。

「風でモノが飛んできてガラスが割れたことによる吹き込みにより、テレビが倒れた」というのが風災被害になります。

 

このように「補償内容」はマンションに起こり得る事故に重点を置いて決めましょう。

 

 

 

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