ほけんがせいかつのシゴト

保険代理店のつぶやき


 スポンサードリンク

子供が蹴ったボールが起こした事故 親の責任はどこまで?最高裁が判決

先日、個人賠償責任保険が役立つ事故の例として、蹴ったボールで起きた事故の判決が出ました。

 

最高裁第1小法廷は9日、「危険でない行為でたまたま人に損害を与えた場合、親に賠償責任はない」という判断を出しました。

 

従来、同じようなケースでは、親の監督責任を認める判決が多かったことから、この判決は今後の裁判に影響を与えそうです。

 

 

 

民法では、子供が第三者に損害を与えた場合、親が監督義務を怠っていれば賠償責任を負う、と定めています。従来は「監督責任」の範囲が不明確だった為、同様のケースでは親が賠償責任を負うことがほとんどだった。

 

この判決で、子供だけではなく、認知症高齢者の徘徊を原因とした事故の賠償にも影響を与えると言われています。

 

この裁判は、校庭でサッカーのフリーキック練習中、蹴ったボールが門扉を超えて道路へ転がり、バイクで走行中の80代の男性がボールを避けようとして転倒。足を骨折し、それが原因で寝たきりとなり、さらに認知症を患い約1年4ヶ月後に誤嚥性肺炎で死亡した。遺族は死亡の因果関係が骨折したことに起因したとして、ボールを蹴った男児(当時11歳)の両親を訴えていた。最高裁は、監督義務を怠ったとして賠償を命じた一,二審判決を破棄し、請求を棄却。遺族側の逆転敗訴が確定しました。

 

判決は四人の裁判官が全員一致。同小法廷は判決理由で、工程でのサッカー練習など日常的な行為で子が人に損害を与えた場合について「危険を予測できたなどの特別な事情がない限り、親が監督義務を尽くしていなかったとは言えない」と初めて判断。「通常のしつけをしており事故も予想できなかった」と結論づけました。

 

さすがに今回のケースで親の監督義務を怠ったと判断されると、一体どこまで親の責任が及ぶのか、保護者としては子供にボール遊びはもちろん、外に遊びに出るなと言われているようなものです。故意や過剰な行動により起こった事故ならともかく、通常のスポーツの中で起こった事故なのですから、予測の範囲を超えていると言えるでしょう。つまり、監督義務を怠ったとまでは言えません。

 

もちろん、少年は自己の原因を起こしたのですから、親としてお見舞い程度は当然するべきでしょう。

しかし、今回の被害者の遺族は寝たきりから痴呆になり、1年4ヶ月後に誤嚥性肺炎で死亡したことまで少年が蹴ったボールによるものだと主張しました。

例えば、保険の支払い対象となった場合、当初の入院、通院と後遺障害の認定と慰謝料が支払われるでしょう。

しかし、認知症になったことや1年4ヶ月後に死亡したことまで因果関係を認めることはまずありません。よほど医学的に証明されなければ認められることはありません。

 

当然、「きっかけ」にはなったかもしれませんが、入院しただけで必ずしも地方になったり寝たきりになった原因の全てが事故によるものとは認められないからです。

そこには年齢などの原因が関係していると判断されます。“一般的”には足を骨折したからといって必ずしも寝たきりや痴呆になることがないからです。

 

もちろん、遺族側としては納得できない部分は多いでしょう。寝たきりになったこと、痴呆症になったことで看護する家族の負担は大きいでしょうし、その部分の慰謝料を求める気持ちも分かります。遺族としては「事故がなかったらこんなことにはならなかった」という思いが大きいはずです。

 

しかし、日常生活の中で起きた事故であり、故意や重過失から起こって出来事ではないため、親に監督義務を怠ったとまでは言えないと判断されたのです。ですから、(受け取ったかどうかはわかりませんが)通常、入院、通院治療費と慰謝料、交通費、そして認定されれば後遺障害の度合いによる保険金が支払われます。

 

しかし、両親はよく戦ったと思います。

 

一審、二審の判決のままでは、子供の起こした事故で人が亡くなったという事実が突き付けられ、一生重荷を背負ったまま生きていかなければなりませんでしたが、あくまで日常の事故であり、誰しもが起こしうる出来事だったと最高裁が判決してくれたおかげで、子供は救われました。

 

私も、「保険でカバーできるから」と言っていますが、そこはお金ではなく子供のために、いかに親が戦い、子を守ったか、家族を守ったかと言うことが大事なんです。

 

 

交通事故被害者のための損害賠償交渉術 (DO BOOKS)

交通事故被害者のための損害賠償交渉術 (DO BOOKS)